人体 神秘の巨大ネットワーク 22021.03.15
脳を全身の司令塔とする従来の常識を覆して、身体中の臓器がメッセージを伝える物質を交換しながら、互いに直接情報をやりとりすることで、生命は成り立っているという驚きの事実が明らかになってきています。
「人体2」では“脂肪と筋肉”および“骨”もまた情報を発信していることが明らかにされます。
脂肪からのメッセージ物質には、食欲を抑制するレプチン、糖尿病やメタボリックシンドロームに関連するアディポネクチン、栄養や酸素が不足する場所に「血管を作って!」と働きかけるVEGFなどが知られています。
骨が出すメッセージ物質では、骨形成のブレーキ役のスクレロスチン、「脳に記憶力をアップせよ!」というメッセージを伝えるオステオカルシンなどが重要です。
エピソード1 ブレイク・コールドウエルさんは数々のレースで入賞する自転車選手でしたが、33歳のとき骨の異常が見つかり引退を余儀なくされました。
レースではなく自転車で友人との待ち合わせ場所に向かう途中雨で滑って転倒、太ももの付け根を骨折してしまったのです。
その後の診断や別の研究から、コールドウエルさんの骨量が異常に少ないこと、骨形成のブレーキ役の「スクレロスチン」が大量に発生していたこと、発汗を伴う自転車運動でカルシウムが不足すること、そして何よりも、骨への衝撃により骨量が増えるのだが、自転車だけで、ランニングやウオーキングが少ないと、骨への衝撃が少なく、骨量が減ってしまうことが分かってきました。
コールドウエルさんの例を分析したヒントン博士は運動の種目と骨量の関係を分析し、20から50代の男性の骨粗しょう症予備群の割合がランニングのグループが19%に対し、自転車のグループが63%であることを報告しています。
追加の研究から博士のたどり着いた答えは「骨に伝わる衝撃の違い」だったのです。