新型コロナの読むワクチン2022.03.22
新型コロナの読むワクチン 西村秀一 幻冬舎 2022/2
著者は国立病院機構系仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長で呼吸器系ウイルス感染症研究の中心人物のひとりと巻末に紹介されています。 新型コロナワクチン本当の「真実」宮坂昌之著 講談社現代新書 2021/8 も一部参考にさせていただきました。
・コロナウイルスの変異とは
ウイルスは宿主(この場合は人)の細胞を利用して自らのコピーを作り増殖します。その複製時に遺伝子の一部に間違いが起こります。間違いの結果がウイルスにとって不都合でない場合、生き残り、増殖が可能であると変異株となります。その変異株の増殖が従来株より早かったり、人体の各種の免疫に強かったりすると、主流になっていきます。オミクロン株もそうした変異の結果現在主流の株になっています。
・ワクチンの効果
西村先生は前著「新型コロナの大誤解」で新型コロナでは最初に上気道の表面でウイルスが増えるため、ここで感染が終われば重症化しないこと、またこのワクチンでできる抗体は血液封を流れるので、最初の感染を防ぐのは難しいが、肺炎のような重症化は期待できると書かれたそうです。実際にもこのように推移しているとみられ、大阪を除いては、東京も含め感染者の増大にも関わらず、重傷者は少なく、医療のひっ迫も、抑えられ、3月21日の、まん延防止等重点措置の解除につながっているとみられます。日経サイエンス2022.04の「特集コロナワクチン3回目接種 オミクロンにどれだけ効くのか?」を参考にして要約すると
疫は残っているが、そのうち発症を防ぐ免疫は低下している。3回目の接種でこれを補うことができる。その場合でも低下の速度はデルタ株よりも大きい。
・デルタ、オミクロンともにワクチン接種により重症化率は大幅に減少する。2回目接種の効果も残っている。
・3回目のワクチン接種は以前と同じでも異なるものでもよい。
・発症すると重症化する高齢者や基礎疾患のある人は3回目接種の重要性はひときわ高い。
・新型コロナの感染様式と対策
西村先生は新型コロナが空気感染であることを強調しています。初期に一般にいわれていたのは接触感染で、ドアノブを消毒する、手洗いが重視されたのがその表れです。空気感染の根拠として先生はダイヤモンドプリンセス号での経験、換気のよくない環境での多数のクラスターの例をあげていて評者にも説得力あるものと感じられました。空気感染となれば対策もきまってきます。空中のウイルスを鼻や口から吸いこんで感染することを防ぐことが対策となります。換気によりウイルスの濃度を下げることと、マスクを正しく着用することが大事ということです。